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    くるみの心疾患への健康効果は腸内細菌の改善によりもたらされる可能性

    2019/12/18

    カリフォルニア州フォルソム(2019年11月)―くるみを摂取することで得られる心臓と腸への健康効果には関連性がある可能性が、新たな臨床研究から明らかとなりました1。この研究は「Journal of Nutrition」に掲載されたもので、くるみを摂取すると、消化管内の特定の腸内細菌が増え、血圧とコレステロールの改善に関連することが示されました。研究グループはその原因として、くるみに含まれる生理活性成分と脂肪酸、そして食物繊維という特有の組み合わせ2によるものである可能性を指摘しています。

    カリフォルニアくるみ

    米国消費者がリスク因子の管理に役立つ健康によい食物を求める傾向はますます高まっており、なかでも腸と心臓の健康に対する効果が関心の的となっています3。その背景には、米国では6,000万~7,000万人*が消化器疾患に罹っており、さらに心疾患は死因の第一位を占め、心疾患と診断された人の数は2,800万人*に及ぶという現状があります4,5

    今回の研究は、ペンシルベニア州立大学(The Pennsylvania State University)とジュニアタカレッジ(Juniata College)の研究グループが実施したもので、過体重または肥満(BMI:25.0 ~ 39.9 kg/m2)で心疾患リスクを有する 30~65歳の42人が対象とされました。参加者は最初に、研究開始時点の条件が同じになるよう、標準的な欧米食(炭水化物48%、蛋白質17%、脂肪35%、飽和脂肪 7%)を2週間にわたり摂取しました。その後、脂肪酸の一部をくるみで置き換えた食事群、くるみと同じ脂肪酸(多価不飽和脂肪の一種であるオメガ3 ALA[α-リノレン酸]を含む)を含んだブレンド植物油で置き換えた食事群、またはオメガ9 オレイン酸(一価不飽和脂肪の一種)の割合がより高いブレンド植物油で置き換えた食事群に無作為に割り付けられました。
    これらの食事は、くるみに含まれる良質の不飽和脂肪に健康効果があるのか、あるいはくるみ全体に含まれる生理活性成分や繊維などといったその他の栄養素も付加的な役割を果たしている可能性があるのかを検討するために設定されたものです。

    参加者全員が、3種類の食事をそれぞれ一定の間隔(平均22.8日)をあけて各6週間にわたり摂取しました。心臓の健康を示す血圧やコレステロールなどの標準的マーカー、および参加者の消化管内に生息する微生物について、それぞれの食事の摂取前と摂取後に評価を行いました。

    くるみ摂取群とくるみと同じ脂肪酸を含むブレンド植物油摂取群の人では、標準的な欧米食の摂取群に比べて健康に良い腸内細菌が増加し、オメガ3 ALAによる良い影響が示唆されました。くるみ摂取群の人では、特定の細菌種の特異的な増加がみられました。この細菌種は、心血管への健康効果との関連が示唆されているくるみの生理活性成分であるエラジタンニンの代謝において重要な役割を果たしています。これらのくるみおよび植物油に含まれる脂肪酸の種類が腸の健康によい影響を及ぼす可能性がありますが、今回の研究からは、くるみ全体を摂取することによる健康効果が示唆されました。

    いかなる科学的研究も、研究の限界を考慮する必要があります。今回の研究では、腸内細菌の機能度を評価するのに使用される二次代謝物や、腸内微生物に影響を及ぼしうるALAのEPAへの転換は評価されていません。さらに、(腸内細菌の評価に用いた)便検体は、食事や服薬、生活習慣などさまざまな要因により個人個人で大きく異なり、腸環境全体を表すものではない可能性があります。これらの理由から、今回認められた効果を明らかにするには、より多様な集団を対象に、より大規模で長期にわたる研究を行う必要があります。

    本研究結果について、栄養学や動脈硬化の研究がご専門の吉田 博先生(東京慈恵会医科大学附属柏病院 副院長・東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座 教授・大学院代謝栄養内科学 教授)は、「本研究は、くるみによる健康効果はくるみに含まれる良質の不飽和脂肪によるものなのか、あるいはくるみ全体に含まれる生理活性成分や繊維などその他の栄養素も付加的な役割を果たしているのかどうかを検討したものです。くるみおよびくるみと同じ脂肪酸を含むブレンド植物油を摂取した場合、健康に良い腸内細菌が増加し、とくにくるみそのものを摂取した場合に増加した腸内細菌は、non-HDLコレステロールや血圧の低下との有意な関連が認められた。以上から、くるみによる健康効果は、くるみに含まれる生理活性成分と脂肪酸、そして食物繊維という特有の組み合わせによるものである可能性が示されました」と著者の見解を支持しています。

    *消化器疾患は、日本人でも罹患する疾患ではもっとも高く、厚生労働省の患者調査によると、消化器疾患の外来患者数は、全疾患で最も多く約1,300万人(入院患者と合わせた総数1360万人)と推計されています1。一方、日本では死亡率第一位はがんであり、心疾患(高血圧性は除く)は第2位となっています2。心疾患の患者数は同調査では250万人と推計されています1
    1厚生労働省「2017年(平成29年)患者調査の概況」
    2厚生労働省「2018年(平成30年)人口動態統計(確定数)の概況」

     

    • くるみのかぼちゃサラダ

      参考レシピ:くるみのかぼちゃサラダ

    • 桃のコンポートとくるみ入りヨーグルト

      参考レシピ:桃のコンポートとくるみ入りヨーグルト

    参考文献:
    1Alyssa M Tindall, et al. Walnuts and Vegetable Oils Containing Oleic Acid Differentially Affect the Gut Microbiota and Associations with Cardiovascular Risk Factors: Follow-up of a Randomized, Controlled, Feeding Trial in Adults at Risk for Cardiovascular Disease. The Journal of Nutrition, nxz289, https://doi.org/10.1093/jn/nxz289
    2くるみ1オンスに含まれる総脂肪量18g、一価不飽和脂肪 2.5g、多価不飽和脂肪 13g、うちα-リノレン酸(植物性ω–3脂肪酸)2.5g、食物繊維2g
    3国際食品情報協議会(International Food Information Council:IFIC)。 2019 食品および健康調査(Food and Health Survey)2019
    https://foodinsight.org/2019-food-and-health-survey/
    4国立糖尿病消化器病腎臓病研究所(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)。米国消化器病統計(Digestive Diseases Statistics for the United States) 2014
    https://www.niddk.nih.gov/health-information/health-statistics/digestive-diseases
    5米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)。 心臓疾患の現状(Heart Disease Facts)2017
    https://www.cdc.gov/heartdisease/facts.htm

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